兵庫県立男女共同参画センター・イーブン

【8/29(木)】第28期男女共同参画アドバイザー養成塾 公開講座/男女共同参画セミナー
「男性の家事・育児・介護~無償労働の配分にかかる実証的研究~」を開催しました!

男女共同参画

[開催報告男女共同参画セミナー男女共同参画アドバイザー養成塾]

【8/29(木)】第28期男女共同参画アドバイザー養成塾 公開講座/男女共同参画セミナー
「男性の家事・育児・介護~無償労働の配分にかかる実証的研究~」を開催しました!

開催日:
令和6年8月29日(木)10:30~12:30
 このセミナーは、第28期男女共同参画アドバイザー養成塾の第10回講座を公開したものです。
 立命館大学産業社会学部教授の筒井淳也(つついじゅんや)さんを講師にお招きし、明治後期・日本の近代初期から現代に至る性別分業の有様、各時代における家族形態と家事・育児等無償労働の担い手の変化や今後の共働き社会を前提とした「新」性別分業について、現状データの分析を踏まえて計量社会学的視点から、夫婦(男女)の課題を整理、方向性を解説くださいました。
 公開講座は、上記の模様を YouTube Live によるオンライン講座としてライブ配信したものです。
 受講者からは、「男性の家事・ケアについての歴史を学ぶことができてよかったと思いました」「『家事=仕事の一部』と捉えることで性別分業の捉え方が変わり、働き方も変化し、新しい社会像になると思いました」「家族で何とかしろ、自己責任とするのではなく、男の育休拡大など社会と会社(企業)といっしょに人を育てていく仕組みがほしいと思いました」等の感想が寄せられ、働き方改革の今後と将来の共働き社会における無償労働の配分や多様性の課題等について、深く考える機会となりました。
    <写真1 性別分業の影響と家父長制のはじまり>
     人類学者のマードックによれば、
     人類初期の食生活は、もっぱら狩猟に依存しており、女性に比べ体格や力に優れた男性が狩猟を担うようになった。また、狩猟はどこにどんな獲物が棲息しているかという場所に対する知識が重要なので、「女性が男性の生活拠点(家族、家)に嫁いでくる」嫁入り婚、夫方居住が広がった。
     その結果、家計が父系(父から息子へ)を辿るようになり、結果的に家父長制(男性優位の権力体制)が広がっていった、とされている。
    <写真2 家事は家族がやるもの?>
     家業を営んでいる家における家事を考えてみると、家事は家族でやるものではなく、奉公人や女中がやるものであった。特に昭和初期ぐらいまでは、家業をやりながら家事をこなすのは、負担が大きかったため、女中を雇って家事を任せるという「女中文化」が発達したが、1970年代以降、サラリーマン家庭が増え、団地に住み、専業主婦層ができて家事を担うようになると「女中文化」が衰退していった。ところが、アメリカなどでは、女性が外で働くようになり、共働きが進むと、再び家事・育児を行う使用人文化が復活している。
    <写真3 日本は共働き社会になりきれていない>
     1970年代にオイルショックが世界中を不況に陥れる中、欧米では「男性稼ぎ手+女性主婦」という家族形態では一家の生計を維持できなくなり、女性も外働きし収入を得るという共働き社会が広がっていったが、日本ではいまだに 「男性稼ぎ手+女性主婦/パート」という形態を維持しており、まだ共働き社会になりきれていない。
     左のグラフは青が共働き世帯、赤が専業主婦世帯を表しており、専業主婦世帯が急速に衰退していることが見て取れる。そこで、このグラフの共働き世帯(青)をさらに詳しく分類し、「男性フルタイム+女性パート」(青)と「男性、女性ともフルタイム」(グレー)に分割してみると、「男性、女性ともフルタイム」(グレー)は増加してきていないことから、共働き社会になりきれていないことがわかる。
    (参考) 男女共同参画白書(令和4年版) 第8図 共働き等世帯数の推移


    <写真4 男性の家事は女性の負担感を減らすのか?>
     表は、男性の家事頻度1回分の増加が、女性の家事頻度をどの程度減少させることに貢献したかを測定した実証研究の結果である。平易にいうと夫が「オレが今晩の食事をつくるよ」と家事を1回やったとき、妻が「今晩は食事づくりを1回やらなくて負担が減った」と感じたかということを調べたものだが、妻は負担が減ったと感じていないということを表した表である。男性が家事を1回増やしたとき、女性の負担感は0.02回分程度しか減少していない、つまり、男性が家事をいっぱいやっても、女性はその分だけ楽になっていないという結果が得られた。
    (参考) 家事分担研究の課題
     このことから、男性が家事・育児をやるとき、女性の負担感をどれだけ減らせるか、減らせるためには、どのような家事のしかたをしなければいけないか、ということを考えていく必要がある。
    <写真5 質疑応答>
    [質問] 欧米で、近代化・工業化が進み、男女どちらでも(会社に)働きに来てとならずに、女性が家にとどまった背景にはどういったものだったか
    [回答] 「子どもが小さいうちはやはり女性が面倒を見る方がよい」という考え方が世界中にあって、育児の必要性が背景にあったという説というものが一般的に言われたが、現在では、家父長制をそのまま会社組織に持ち込んで、男性が偉そうにするために女性を差別し、労働を独占してきたというのが定説になっている。
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