兵庫県立男女共同参画センター・イーブン

【8/31(木)】第27期男女共同参画アドバイザー養成塾 公開講座/男女共同参画セミナー
「女性の貧困と子どもの貧困~地域社会が担いうる役割を中心に~」を開催しました!

男女共同参画

[開催報告男女共同参画セミナー男女共同参画アドバイザー養成塾終了セミナー]

【8/31(木)】第27期男女共同参画アドバイザー養成塾 公開講座/男女共同参画セミナー
「女性の貧困と子どもの貧困~地域社会が担いうる役割を中心に~」を開催しました!

開催日:
8月31日(木)10:30~12:30
 このセミナーは、第27期男女共同参画アドバイザー養成塾の第11回講座を公開したものです。
 社会学者(博士)で専門社会調査士の神原文子(かんばらふみこ)さんをお招きし、男女共同参画アドバイザー養成塾公開講座/男女共同参画セミナー「女性の貧困と子どもの貧困~地域社会が担いうる役割を中心に~」を開催しました。
 この講座で、神原さんは、日本において女性と子どもが貧困に陥っている現状やその起因となっている政治・経済・社会的背景等について様々なデータをふまえて解説くださるとともに、そうした貧困の解決に必要な支援制度の構築や社会構造の見直し、地域社会に求められる役割について平易にお話しくださいました。
 公開講座は、上記のもようを YouTube Live によるオンライン講座としてライブ配信したものです。
 受講生からは、「日本で当たりまえ、当然(理想)だとされている「家族」はジェンダー平等ではないことがわかりました」「そもそも社会的弱者を作らない、お互いに支え合える社会を作るという考え方を学びました」「現状がたとえ厳しいものであっても、希望をもって皆で努力していくことが未来につながるのだと思えました」等の感想があり、女性と子どもが生きづらい日本社会の課題解決に向けて考える有意義な時間となりました。
    <写真1 はじめに>
     神原さんは自己紹介の中で、受講する姿勢として次のことを求めました。
     ①この講座では話し手である自分と聞き手ある受講者との関係は先生と学生というようなものではなく対等な学びあいの関係であること
     ②ここで話すことは「神原」の考え方であるから批判的に聴いてほしいこと
     ③毎年自身が入手できる最新のデータを示しているので、それを踏まえて女性の貧困と子どもの貧困の実態を理解してほしいこと 
    <写真2 貧困率の解説>
     国民生活基礎調査における相対的貧困率は、一定基準(貧困線)を下回る等価可処分所得しか得ていない者の割合をいいます。 貧困線とは、等価可処分所得(世帯の可処分所得(収入から税金・社会 保険料等を除いたいわゆる手取り収入)を世帯人員の平方根で割って調整 した所得)の中央値の半分の額をいいます。
     ここでは、中央値を仮に450万円とした場合、貧困線は225万円となり、相対的貧困率とは、225万円を下回る等価可処分所得しか得ていない世帯の割合をいい、2022年の国民生活基礎調査ではその割合が15.4%、子どもがいる世帯の割合が11.5%でることや、そのうち一人親世帯は44.5%を数えることが示されています。
    <写真3 女性の貧困化のメカニズムとジェンダーシステムにおける近代家族の位置づけ>
     女性が貧困化するメカニズムを理解するためには、まず、夫と妻の関係から見ていく必要があります(左上)。戦前、女性にとっての結婚は「嫁入り」というように、夫の「家」の一員として所属することであって、女性はその家の労働力以上のものではありませんでした。戦後、現在の憲法が施行されるに至って、第24条に夫婦が同等の権利を有することが明記されましたが、このように憲法に夫婦同権を謳った憲法は世界的にもむしろ稀で、現状は主に生計を維持する夫に妻が従う「一心同体」といってよく、けっして平等な関係とはいえません。「近代家族」は、夫婦関係が何らかの破綻に陥ったときに妻が一方的に経済力を失う構造を内包していると言えます。
     そこで、ジェンダーシステムの視点から「近代家族」を図式化し(右上)、女性の現状を端的に表現すると、経済的側面では主に家事等の無償労働を担い、パート就労で家計を補助的に支え、政治的側面では行政から世帯構成員への通知の受取人になることはなく(コロナ禍での給付金の通知は世帯主に送付された)、社会的には子ども共々被扶養者であり、文化的には、法律婚外子は女性にとって自身が出産した「子」はかならず「嫡出」であるにもかかわらず、「非嫡出子」と呼ばれるだけでなく、最近まで財産分与等に不利益を余儀なくされていました。
     「嫡出」「非嫡出」の解説をする講師(左右下)。
    <写真4 とりわけ一人親女性が貧困に陥る現代>
     1980年代は、世界的にみると女性の就労支援を進めた時代でした。働く女性に関して、日本における契機は1985年の男女雇用機会均等法の制定と翌86年の労働者派遣法の施行でしたが、折しも日本経済は空前のバブル経済へと突入し、所得も物価も右肩上がりに上がり続ける一方、残業転勤を強いることのできる男性の正規雇用に対し、女性は非正規雇用へと追いやられていき、バブル崩壊後に真っ先に離職を余儀なくされてきました。他方、86年から配偶者特別控除、社会保険第3号被保険者制度がはじまり、主たる家計支持者としての夫を応援することを大義に、専業主婦となった女性たちを就労から遠ざけてきたのです(左上)。
     こうして、女性の非正規雇用割合は、1985年の32%から2021年には54%へと増加し、男性も同様の傾向が見られるものの、女性の場合は正規雇用の割合が68%であったのが46%へと半数を割り込み就労の不安定さは一層深刻化となっています(右上、これらの状況を縦棒グラフで積み上げた実数とともに表したのが左下)。
     母子世帯の母親の就業形態は、臨時・パート雇用が多く、しかも、時給が非常に低いことがわかっています。今夏、最低賃金が改定され、千円台にのせましたが、兵庫県では1日7時間22日働いたとしても、税込みで15万4千円あまりの賃金にしかなりません。これでは文化的な最低限度の生活を営むための生活保護世帯(母子3人世帯)の場合にすら達していない現状です(左下)。
    <写真5 質疑応答の神原さん>
     絶望的な現状を表すデータの説明に時間をとられ、希望につながる話が少なかっとの指摘もありましたが、子ども食堂についての質問では、子ども食堂が広がることで子どもの貧困を減らすことにはつながらないと思う~世帯収入を増やすことが抜本対策だと思う~が、そこが子どもに限らず誰もが安心して立ち寄ることができる場所になり、集う人たちが互いの現状を話し合ったり、相談ができる地域の居場所になることで、虐待や暴力を未然に防ぐなど、地域の安全・安心を高める場となってほしいとの見解を述べられました。
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