兵庫県立男女共同参画センター・イーブン

【8/31(木)】第27期男女共同参画アドバイザー養成塾 公開講座/男女共同参画セミナー
「女性に対する暴力と地域社会の役割~性暴力やDVの基礎知識、被害者のトラウマケアを中心に~」を開催しました!

男女共同参画

[開催報告男女共同参画セミナー男女共同参画アドバイザー養成塾終了セミナー]

【8/31(木)】第27期男女共同参画アドバイザー養成塾 公開講座/男女共同参画セミナー
「女性に対する暴力と地域社会の役割~性暴力やDVの基礎知識、被害者のトラウマケアを中心に~」を開催しました!

開催日:
8月31日(木)13:30~15:30
 このセミナーは、第27期男女共同参画アドバイザー養成塾の第12回講座を公開したものです。
 大阪公立大学客員研究員の小松原織香(こまつばらおりか)さんをお招きし、男女共同参画アドバイザー養成塾公開講座/男女共同参画セミナー「女性に対する暴力と地域社会の役割~性暴力やDVの基礎知識、被害者のトラウマケアを中心に~」を開催しました。
 この講座で、小松原さんは、性暴力やDVの背景・原因といった基礎的な知識にはじまり、それらが犯罪として可視化されにくい実態やその理由について詳細に解説くださったのち、人間関係の10の事例が性暴力やDVとしてどう判断されるかという問いかけをとおして、そうした性暴力やDVから生じる被害者のトラウマとそれらからの回復、さらには私たちが暮らしの中で取り組むことができる修復や支援の具体的行動について分かりやすくお話しくださいました。
 公開講座は、上記のもようを YouTube Live によるオンライン講座としてライブ配信したものです。
 受講生からは、「トラウマからの回復についての解説がとても参考になりました」「男性の被害者の辛さもイメージできましたし、関係性の違いで行動のとらえ方が異なることが分かりました」「被害者支援の過程で必要なのはアセスメントとあったので、耳を傾けることにおいても注意していくことが多いのに気づかされました」等の感想が寄せられ、女性に対する暴力を克服する地域社会の取組の在り方について、深く考える機会となりました。
    <写真1 自己紹介と今日の取組>
     小松原さんは、神戸出身。「高校時代はメトロ神戸などこのあたりをウロウロしていて、とても懐かしい気持ちでした。地元で話ができるのは嬉しい」とのことでした(左上)。
     次いで、本日のテーマは性暴力(右上)ですが、こうした話は心理的に負担になることが多いので、聞きたくないと思ったら遠慮なく離席することなどの注意事項(左下)を話された後、講義の進め方、「性暴力やDVの基礎知識を学び、被害者との関わり方」(右下)について説明されました。
    <写真2 可視化されにくい性暴力>
     まず、基礎知識ですが、これまでの性暴力に関する社会動向の振り返り(左上)として、2017年の刑法改正のポイントである次の4点について解説されました。
     ①罪名の更新:強姦罪(男性が加害者)を強制性交等罪(加害者の性別不問)として規定しなおしたこと
     ②量刑の厳罰化:法定刑の下限を懲役3年から5年と重くしたこと
     ③起訴要件としての親告罪の廃止:被害者の告訴に基づき起訴されていた罪を、検察が事実認定することで起訴できるようにしたこと
     ④加害行為等の認定範囲の拡大:親などの監護者による子どもへの性的虐待を処罰することにしたこと
     次いで、こうした改正によってなお、性暴力加害・被害が犯罪として可視化されにくい、つまり起訴されにくい現状(右上と左下:強姦(強制性交等)の起訴率が右肩下がりになっていて、平成26年では37.2% 等)について、例えば、被害者が加害行為に対して「抵抗」した事実の証拠がない場合、「合意」したと見做され、起訴されないことなどが説明されました。つまり、性暴力を加害の側面から追求しようとすると、犯罪として立件するための事実認定のハードルが非常に高くなってしまい、警察も検察も証拠固めが困難なため、起訴しても無駄だ、起訴したくないというような状況が起こっているということです。
     そこで、性暴力を被害者の視点で考え、犯罪として立件できるかどうかに関わらず、被害者の「傷つき」に焦点をあてようというのがこの講義の要点となります(右下)。
    <写真3 犯罪にならないDV> 
     では、DVはどうでしょうか? DV=ドメスティック・バイオレンスは、昔は配偶者間暴力と言われていたが、近年、夫婦や恋人などの親しい間柄で起こる暴力を指すようになりましたが、最近では、この言葉が、親密な関係における暴力とか、ジェンダー構造を背景にした暴力など、パワーバランスの影響下で起こる暴力まで拡げて使われるようになっているほか、面前DVといって親の暴力を目撃した子どものトラウマについても使われています(左上)。
     DVも性暴力と同じく犯罪にはなりにくく、2020年調査では「警察に連絡・相談」した割合が2.9%にとどまっているほか、ほぼ半数(47.4%)が「誰にも相談せず」としています。しかしながら、この「誰にも相談しない」割合は、2005年調査では約6割であったことから、相談する人はずいぶん増えてきているといえるが、相談機関や専門機関への相談が併せても5%と少ない状況にとどまっています(右上)。
     DVについて、誰にも相談できない理由は主なものとして「相談するほどのことでもないと思った(47.8%)」「自分にも悪いところがあると思った(32.6%)」「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思った(20.3%)」「別れるつもりがなかったから(14.9%)」となっており、DVの相談を離婚や離別に結びつけて考えており、相談しないことをそうならないことを探っていると捉えると、関係性に希望を捨てたくないためかも知れません。そこで、DVがあっても別れない理由をみてみると、そこには明確な男女差があり、女性は経済的な不安や復讐への恐怖が主な理由となっているのに対して、男性は社会的評価や孤立への恐れが主な理由になっています(左下)。
     DVや性暴力といった親密な関係の中で起きる暴力というのは、被害者がもう耐えられないという状況になったときには、関係が完全に破綻しており修復不能になっていることが多いと言えます。ゆでガエルの寓話(右下)は、こうした特徴のことで、まだ耐えられると思っているうちに茹だってしまうことを表しています。
    <写真4 トラウマと回復>
     私たちは警察官でも、検察官でも、裁判官でもないわけだから、加害者の処罰を目的とするのではなく、被害者の回復に焦点をあてて、回復を優先して考えたいと思います(左上)。
     性暴力やDVの被害者は深刻なトラウマを負うといわれていますが、半数は自然に回復することも知られています。しかし、その回復は直線的に回復するのではなく、何度も同じステップを繰り返して回復していくのであって、らせん階段をあがるように徐々に回復するとされています(右上)。
     では、私たちは被害者にどうのように向き合うべきでしょうか? 被害者の話を聞くときに不用意な助言や励ましをすることによって、その一言がむしろ被害者をさらに傷つけることになりますが、こうした二次被害を与えないようにしなければいけません(左下)。
     被害者の話を聞くときの態度は、助言や支援したいという聞き手の働きかけではなく、被害者が何をしてほしいかを優先的に考え、被害者に選択肢を与えることが重要です(右下)。
    <写真5 地域社会には何ができるのか?>
     地域社会に何ができるのでしょうか? まず、被害者の情報へのアクセスを保障すること、法改正や新しい調査結果など情報の更新をすること、そして人と人とを繋ぐことが非常に重要です(左上)。
     では、具体的に明日からどんなことができるでしょうか? 次に示すのは小松原さんが実際にやっていることです。まず「本棚を作る」ことで、職場などに性暴力やDVについての図書や映像を集めておきましょう(右上)。こうすることで、自分タイミングで情報を得ることができ、気になっている人がいつでも手に取れるようになることにくわえて、これらのリストを作るだけでも勉強になります。それから「勉強会を作る」ことで、読書会でもいいので小さい集まりで仲間を作りましょう(左下)。こうした集まりが、講師を呼んできて講演会を開催することに発展したり、地域社会に知識を広めていくことにつながります。
     質疑応答では、トラウマの回復やDVの連鎖などについての質問がありました(左下)。
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