兵庫県立男女共同参画センター・イーブン

【9/14(木)】第27期男女共同参画アドバイザー養成塾 公開講座/男女共同参画セミナー
「家事労働の平等化とは~計量社会学的な観点を中心に~」を開催しました!

男女共同参画

[開催報告男女共同参画セミナー男女共同参画アドバイザー養成塾終了セミナー]

【9/14(木)】第27期男女共同参画アドバイザー養成塾 公開講座/男女共同参画セミナー
「家事労働の平等化とは~計量社会学的な観点を中心に~」を開催しました!

開催日:
9月14日(木)10:30~12:30
 このセミナーは、第27期男女共同参画アドバイザー養成塾の第13回講座を公開したものです。
 佛教大学現代社会学部講師の柳下実(やぎしたみのる)さんをお招きし、男女共同参画アドバイザー養成塾公開講座/男女共同参画セミナー「家事労働の平等化とは~計量社会学的な観点を中心に~」を開催しました。
 この講座で、柳下さんは、「労働」や「家事」の定義をはじめとして、家事労働に関する基本的な知識、計量的に社会学研究を進めるにあたっての留意点、家事分担に関する先行研究と最近の研究等に関しジェンダー格差と家事労働の不平等にフォーカスして、家事労働時間の差のみならず、家事工程の管理にかかる負担といった視点によって可視化される不平等など、多数のデータに基づき解説くださるとともに、働き方や暮らしの見直しについて詳しくお話しくださいました。
 公開講座は、上記のもようを YouTube Live によるオンライン講座としてライブ配信したものです。
 受講生からは、「社会学の知見を生かしていくために、どう具体的に行動すればよいか考えました」「男性の家事を増やすことがゴールなのか、女性の就業の問題なのか等々、もっと深く視野を広げる必要があると思いました」「今日のテーマは、日々の家事を見つめ直し、これからの子どもたちの生活についても「労働」「お金」「家族」というテーマで考えてみたいと思いました」等の感想が寄せられ、働き方や暮らしの見直しについて多くの気づきをいただきました。
    <写真1 本講義の内容・全体の流れについて>
     「家事労働の平等化」ということをどのように考えるかということですが、まず家事というのはそもそもどのくらいあるのか、次いでそれらをどのように分担するのか、という二つ考えることがあります。そこで計量的な家事労働研究がやっていることですが、まずコアな家事、つまり食事における調理や掃除、洗濯、買い物といった家事の中心といえるタスクに費やす時間の長さや頻度を測定して男女の負担を明らかにするということで、家事労働に関する基本的な理解をもってもらいます。
     次いで、家事の理論ということで、家事というのはどういう労働なのかという、もともとアメリカからきた研究についてお話しします。
     三つ目に、計量的というと何か解釈の仕方も一通りで堅いものと捉えられがちですが、データを取扱うというのはけっしてそういった堅いものではないということを計量的な社会学研究の留意点というところで話します。
     そして最後に私自身の研究も含めた最近の研究の動向についてお話ししたいと思います。
    <写真2 家事労働とは>
     家事労働は社会学が取扱う問題としては見落とされてきました。そこで、まず研究の枠組みを決めなければいけないわけで、家事労働を定義しようというところかです。例えは、食事の用意のような、食材を買ってきて調理してのようなことは製造業の各工程、つまり「仕事」にあたるだろうといことで、次にそれらの「仕事」を生活の中でどう割り振るか、だれが、いつ、なにをするかを考えること、つまり「仕事」のマネジメントも家事にあたると考えます(左上)。
     家事をこう定義して、それらの「仕事」をどのように計測するかということで、「生活時間調査」というものがはじめられました。これらには、NHKの「国民生活時間調査」や国立社会保障・人口問題研究所の「全国家庭動向調査」があります。夫婦における「見えない家事」の遂行は、第6回全国家庭動向調査(※)で報告されたものです。特徴は、調理や掃除といった「仕事」のほかに、「献立を考える」「ゴミを分類し、まとめる」「家族の予定を調整する」などのマネジメントの部分を家事として捉えていることで、白い部分が女性の分担であるが、かなり女性に偏っています(右上)。
     こうした分担の傾向をどう捉えていくと平等化につながっていくかですが、従来から三つの議論があります。まず、時間制約説というもので、人が消費する時間は労働・余暇・睡眠に分けられ、そのうち労働は世帯内・世帯外に分けられるから、世帯外労働=会社勤務などの時間が長くなったら世帯内労働=家事に時間を費やせないとするもので、ここか労働時間や通勤をどうしていったらいかという議論がはじまります。2番目が交渉理論といって、「家事はやりたくないもの」ということを考え方の基盤として、家庭内の権力の強いものが弱いものにそれを押しつけるというものです。その押し付け合いの理由や基準に賃金や学歴などがあります。3番目はイデオロギー説で「男は仕事、女は家庭」という考え方に賛成していると、男性が仕事を多くやり、女性が家事を多くやるという性役割意識が家事労働の分担をきめているというものです。けれど、性役割意識は変わっていくものなので、家事分担の分析に有効だとは思えないと考えています。こうして家事労働の研究は、家事分担研究が主に行われてきたわけですが、これらの議論では家事分担を十分説明できていないと思われます(左右下)。
    ※ 内閣府男女共同参画局のHPでも紹介されています。
      https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/201912/201912_04.html
    <写真3 柳下さんの最近の研究について>
     柳下さんは「家事を分担する時間のジェンダー不平等とは、それらの時間の長さの不平等なのか?」と考え、まず日本社会における男性と女性の1日24時間が仕事や家事にどう費やされているかを観察しました。そこで、時間帯別の仕事・家事・育児の行動者率というものに着目し、それらが男女で大きく異なることから、多様な観点からジェンダー不平等を検討する必要性やジェンダーや社会学理論と生活時間研究の成果を結びつけて考察することが必要と考えました(左上)。
     その研究のためのデータとして用いたのが総務省が1979年から実施している社会生活基本調査です(右上)。
     まず、仕事の時間帯別の行動者率(全体、平日)をみると、全体として男性が女性より高い割合を示し、8時から12時までと13時から19時までが、男性が極端に高い割合を示しています(左下)。
     一方、家事の時間帯別の行動者率(全体、平日)をみると、全体として女性が男性より高い割合を示し、5時から11時までと16時から21時までが、女性が極端に高い割合を示しています(右下)。
    <写真4 柳下さんの最近の研究について>
     時間帯別の行動者率について正規雇用の人についてみてみると、仕事のそれは男女で差がないことがわかります(左上)。つまり、男女とも仕事に費やす時間の費やし方は同じだということが分かります。一方、家事のそれでは家庭にいる時間帯で女性の方が明らかに高いことを示しており(右上)、ジェンダー不平等がいっそう明確に示されてします。また、6歳未満の子どもを持つ共働き家庭の平日に関する育児の行動者率では、男女とも同様の傾向であるものの、女性の行動者率が圧倒的に高いことが分かります(左下)。
     これらは、女性が男性に比べて、正規雇用に適合する生活時間を実現しにくいことを示しており、ジェンダー不平等が明らかです。生活時間のジェンダー不平等を解決するために、生活時間研究の知見と社会学やジェンダー理論を結びつけて、多面的な取り組みが必要です(右下)。
    <写真5 質疑応答:未婚者の家事の行動者率について>
     20代後半から30代の未婚男女の家事の行動者率をみると、未婚女性のそれの方が著しく高くなっていっているが、こういったデータを先生はどのように活用していくのかという質問がありました。
     こうした傾向が現れる理由は、講義中にもふれましたが、女性の方が健康志向が強かったり、結婚を意識したときに家事の必要性を強く感じたりするのではないかと考えられます。そこでこうしたデータの活用や見方ですが、これらのデータを収集する調査などをとおして、社会の見方を反省できるということがまずあると思います。経済学の方々がデータに基づいて政策提言をされることが多いように思いますが、私は社会学者として、こうしたデータを社会学のフレームワークの見直しに役立てたり、まだまだ分からないことが多い現代社会について、もっとよく知ることに結びつけばいいと考えています。
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