兵庫県立男女共同参画センター・イーブン

【9/28(木)】第27期男女共同参画アドバイザー養成塾 公開講座/男女共同参画セミナー
「地域防災と女性~男女共同参画の視点から地域防災を考える~」を開催しました!

男女共同参画

[開催報告男女共同参画セミナー男女共同参画アドバイザー養成塾終了セミナー]

【9/28(木)】第27期男女共同参画アドバイザー養成塾 公開講座/男女共同参画セミナー
「地域防災と女性~男女共同参画の視点から地域防災を考える~」を開催しました!

開催日:
9月28日(木)10:30~12:30
 このセミナーは、第27期男女共同参画アドバイザー養成塾の第17回講座を公開したものです。
 関西国際大学客員教授の斉藤容子(さいとうようこ)さんをお招きし、男女共同参画アドバイザー養成塾公開講座/男女共同参画セミナー「地域防災と女性~男女共同参画の視点から地域防災を考える~」を開催しました。
 この講座で、斉藤さんは、主に東日本大震災と熊本地震における避難所の運営、被災生活等とそこでの性暴力や生活再建の取組にかかる実態調査の結果に基づき、女性の視点から地域防災を考察・検討するとともに、地方公共団体が定めている地域防災計画や防災会議における女性の登用状況などを踏まえて、現下の地域防災を改革・改善するための考え方や施策のあり方、具体的な取組等について、わかりやすくお話しくださいました。
 公開講座は、上記のもようを YouTube Live によるオンライン講座としてライブ配信したものです。
 受講生からは、「災害時には、平常時にコントロールできていた人権意識の低さ、男女格差が表出することがよく分かりました」「女性にとって不利な制度が日本社会の中に維持されていることに驚きました」「地域防災に女性の視点を入れていく必要性を学びました」等の感想があり、今後の取組に向けて有益な事例を学ぶとともに、女性の視点から地域防災を考える重要性を認識できた有意義な時間となりました。
    <写真1 災害と女性>
     斉藤さんは、CODE海外災害援助市民センター(※1)在籍時のアフガニスタンやイラン出張の経験から、災害時の女性の苦しみや不条理について考えるようになりました。2003年イラン・バム地震(※2)では、被災し夫を亡くした女性は、自身が居住地の住民であることすら証明できないという現実・イスラム教国であることの不条理に直面しました。こうした経験から、災害と女性をライフワークとして研究を続けています。
    ※1 CODE海外災害援助市民センター https://code-jp.org/aaaは、阪神・淡路大震災の経験と知見を活かし、幅広い智恵や能力をもつ企業、行政、国際機関、研究機関、NGOなどを含めた市民の集まる場として2002年1月17日に発足したNPO法人です。
    ※2 2003年12月26日午前5時28分、イラン南東部のケルマーン州バムで起きたマグニチュード(Mw)6.6の直下型地震。バム市とその周辺で約50,000 棟の家屋が破壊され、約43,200名が死亡、約90,000名が家を失い、約200,000名の人々が物的・経済的な損害を被っていると報告されています。
    <写真2 避難所運営からわかったこと>
     阪神淡路大震災では、避難所が女性により大きなストレスや困惑を与えることが初めて分かったとされており、多くの教訓を後世に伝える努力がなされたものの、15年以上を経て発生した東日本大震災でも、プライバシーの欠如、授乳、洗濯、配給物資のサイズ、必要性(生理用品、化粧水、化粧品等)の欠如など、同様の事態を経験することとなりました(左上)。
     一方、避難所に避難しなかった被災者、言い換えれば避難所の状況に耐えられなかった被災者、つまり乳幼児などの子どもをかかえた世帯に注目すると、一旦避難所に逃げ込むものの、避難所の不自由で理不尽な状況に耐えられず親戚・知人宅などを転々としていることが分かっています(右上)。
     東日本大震災における避難所運営に関するヒアリング調査によると、女性の役割は炊き出しと掃除、元気な人たちは外に片付けに行くので残された年寄りたちの面倒を見るのは女性たち、といった女性の固定的な役割が災害時に強固になって表出しました。言い換えれば、平時にどういう社会に生きているかということが、災害時により明らかになるといえます(左下)。
     そうした不自由や理不尽な状況は、東日本大震災の5年後に発生した熊本地震ではどのように変わったか。例えば乳幼児世帯専門の避難所が開設されたり、保育士や助産師との連携が行われました(右下)。
    <写真3 災害時にこそ、女性の視点が必要>
     子どもを連れた世帯が災害時に不自由をするのは、避難所運営などに女性の視点がともなわないからだと考えられます。
     そこで、この考えを検証するため、都道府県防災会議の委員に占める女性の割合(※1)を確認すると、兵庫県は2011年4月では委員47人のうち女性は0人、2022年4月では56人のうち7人、2023年4月では58人のうち10人と、徐々にではあるが増えていることがわかるとともに、東日本大震災当時、愛媛県と鳥取県を除く、どの広域自治体も女性委員の比率は10%未満であり、東日本大震災の被災県はどこも5%未満であったことがわかります(左上)。
     このような女性の参画に関する情報は、内閣府男女共同参画局のホームページで、2016年度から「市区町村女性参画状況見える化マップ」(※2)として公開されています(右上は、2022年度の兵庫県内市町における防災会議に占める女性委員の割合をしめしたもの)。このデータベースからは、当該指標の全国ランキングなども調べることができ、1位は佐賀県鹿島市で、委員26人中女性が14人(53.8%)、過半数を占めていることが分かります。
     そこで、ランキング1位の佐賀県鹿島市の地域防災計画(※3)をみてみると、「具体的には、指定避難所等における女性や子供等に対する性暴力・DVの発生を防止するため、女性用と男性用のトイレを離れた場所に設置する」や「指定避難所の運営において女性の参画を推進し、男性に偏った運営体制とならないよう配慮する。 また、男女のニーズの違い等男女双方の視点に加え、LGBTなど多様な性のあり方等に配 慮する」などの記述をみつけることができます(左下)。
     市区町村の防災・危機管理部局の女性職員の割合と常備備蓄の割合の比率(※4)をみると、女性用品、妊産婦用品、介護用品など計31品目の備蓄の割合について、女性職員を10%以上配置している自治体の方が、女性職員がゼロの自治体に比べ、備蓄の割合が高いことが分かります(右下)。
     このように、災害時にこそ、女性の視点が必要だということが分かります。
    ※1 スライドの2011年4月の根拠数値は、地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況 https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/suishinjokyo/suishin-index.htmlを参照してください。
    なお、2022年4月は、令和3年版 防災白書|図表1-10-1 地方防災会議の委員に占める女性の割合の推移について https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r03/zuhyo/zuhyo1-01_10_01.html
    ※2 市区町村女性参画状況見える化マップ https://wwwa.cao.go.jp/shichoson_map/?data=5&year=2022&todofuken=28
    ※3 佐賀県鹿島市地域防災計画 https://www.city.saga-kashima.lg.jp/main/3374.htm の「第2編 風水害対策」の131ページ「2 指定避難所の運営管理等」「(3) 男女双方の視点等への配慮」を参照。
    ※4 地方公共団体における男女共同参画の視点からの防災・復興に係る取組状況について https://www.gender.go.jp/policy/saigai/fukkou/pdf/chousa/r3_zentaigauyou.pdfの14ページを参照。
    <写真4 性に基づく暴力の背景>
     「性に基づく暴力」とは、「性差別などの性に基づく不平等な力関係によって生じる身体的、性的、心理的暴力や経済的暴力など、多様な暴力を指す包括的概念」とされますが、災害時には増えるでしょうか?
     災害時の性に基づく暴力に関する研究はほとんどなく、災害時のDV発生状況が把握されないため、対策がとれないといわれてきましたが、ハリケーンカトリーナや東日本大震災後に行われた関連調査によって、実態が明らかにされてきており、 「復旧・復興に一丸となって立ち向かっていこう」という機運の中、災害時の性に基づく暴力は見過ごされやすい傾向にあり、「あなただけが不幸ではない」などの被害者の苦しみを過小評価してしまい、被害者をさらに傷つける二次被害さえ発生しています。
     こうした背景には、平常時からの人権意識の低さが、災害時にいっそう露わになると考えられます。内閣府による人権擁護に関する世論調査(令和4年度)(※)は「基本的人権は侵すことができない永久の権利として、憲法で保障されていることを知っているか」という設問に、「知っている」という回答が100%ではないということが、人権意識の低さを表しています。
    ※ 基本的人権についての周知度 https://survey.gov-online.go.jp/r04/r04-jinken/2.html#midashi1を参照。
    <写真5 質疑応答:地域の意識を高める岡山市の事例>
     地域で実施する防災訓練が形骸化しているので、住民意識を高めるためにどんな工夫が必要かという質問がありました。
     斉藤さんは、基礎知識を学ぶだけでなく、学んだ知識を伝えるためにはどのようにするかを考えることが大切であるとし、岡山市の取組(※1)を紹介されました。この取組は岡山市男女共同参画社会推進センター「さんかく岡山」が令和3年度に実施した基礎知識の前期講座8回と後期講座のワークショップを指します。斉藤さんは、前期講座で学んだことをパネルに落とし込むという後期講座のワークショップ(※2)が、知識を蓄え、意識を向上させることに有効であると述べました。
    ※1 「誰一人取り残さないジェンダー視点で考える防災」 のチラシ https://www.city.okayama.jp/kurashi/cmsfiles/contents/0000029/29848/R3-application.pdf
    ※2 作成した「啓発パネル」に関する岡山市のホームページ https://www.city.okayama.jp/0000035626.html
    講座・セミナー一覧

    Copyright © Hyogo-Prefectural Gender Equality Promotion Center all rights reserved.