兵庫県立男女共同参画センター・イーブン

男女共同参画セミナー「無自覚な偏見といかに向き合うか~男性の特権とマイクロアグレッション~」を開催しました!

男女共同参画

[開催報告男女共同参画セミナー男女共同参画アドバイザー養成塾]

男女共同参画セミナー「無自覚な偏見といかに向き合うか~男性の特権とマイクロアグレッション~」を開催しました!

開催日:
令和5年7月20日(木) 13:30~15:30
 第27期男女共同参画アドバイザー養成塾第5講座は、みだしの公開講座/男女共同参画セミナーとして、千葉大学社会科学院特別研究員で、臨床心理士の西井開(にしいかい)さんをお招きし、アンコンシャス・バイアスをテーマに、「無意識の偏見にいかに向き合うか~男性の特権とマイクロアグレッション~」の演題で、ご講義いただきました。
 ジェンダーにまつわるさまざまなアンコンシャス・バイアスと、それらがどのように生じてきたのか、またどんな差別や不利益をもたらしているのか、そしてそれら不平等や不公正にどう向き合い対処するかについて、「特権」「マイクロアグレッション」「抵抗」「介入」などをキーワードに、平易かつ詳細にお話いただきました。
 受講生からは、「特権ということに普段気づけていなかったことが、マイクロアグレッションに繋がっていくことがよく理解できました」「さまざまなところにアンコンシャスバイアスの差別があること。気づかないうちに自分が加害者になっているかもしれないことがわかった」「いろいろな側面から物事を見ることの大切さや、新たな概念を知ることの楽しさを知りました」等の感想が寄せられ、ジェンダー平等な社会の実現を遠ざけている無自覚な偏見に関する理解を一層深めることができました。
    写真1 自己紹介 男性学やジェンダー研究へのきっかけ
     大学の学部生のころに、東日本大震災の被災地にボランティアで訪れ、被災地のコミュニティーを再興する目的で、仮設住宅に住む被災者が集う催し(喫茶や手芸など)を開催しました。すると、女性は集まってくるのですが、男性の姿を見ない、あげくに高齢男性の孤独死などが報じられるなど、なぜ男性は集えないのかと思い始めたことがきっかけで、男性学やジェンダーについて学び、研究することになりました。
    写真2 偏見の基本と弊害
     偏見とは、その人の属性(ジェンダー・セクシュアリティ・人種・出身地など)に基づいて、前もって相手を判断することです。脳の処理能力には限界があるので、対面するすべての個人差や個性をそのまま記憶したり、それらごとに対処を変えたりできないため、「性別」や「人種」といった属性で、反応や対処の仕方を一般化しがちであり、こうした思考は、相手の価値観や個性などの無視といった弊害を招きます。これが偏見の落とし穴であり、「アジア人は真面目だ」とか「ゲイの人はおしゃれだ」といった過剰な一般化(実際は、真面目じゃないアジア人もいればおしゃれでないゲイの人もいる)をステレオタイプといい、こうしたステレオタイプにあてはまる例ばかりに注目し、あてはまらないものは無視してしまうこと、例えば「女性は感情的で、論理的な人は例外」とか「やっぱり、○○人はマナーが悪い」などの決めつけは暴力的であり、そうした思考の偏りを確証バイアスといいます。
    写真3 差別とは何か? を考えてみよう
     差別とは偏見が外に表出され、それが攻撃的になったり、ある集団に大きな不利益をもたらすほど広まった場合をいいます。ここで女性に対する差別について、①家庭でみられるもの、②学校や会社などの組織でみられるものにわけて考えると、①は「男は外で働き、女は家を守るもの」「女性は愛情深く、周りを癒やすもの」という偏見をもとにして、「性別役割分業」という状況を生み出し、役割の固定化、女性の自己実現の困難、DVの発生と正当化などの差別につながっているのです。また②の場合、「女性は賃金労働には向いていない」「女性は笑顔でいてくれたらいい」という偏見から、女性は大きな仕事が与えられない、お茶くみをさせられる、就職・進学、昇位の制限をうける、産前・産後休暇の不備や低賃金(男性との平均年収約74万円差)などがふつうだとして認識されてきたのです。
     こうした性別からくる偏見により顕著な差別をゆるしてきた例として、アメリカのオーケストラ業界があげられます。「男性の方が肺活量が大きいから管楽器に向いている」などの偏見により、音楽大学の卒業生は女性の方が多いのに、オーケストラの構成員はほぼ男性でした。そこで音だけで判断する「ブラインド・オーデション」を実施するようになり、近年の男女比はほとんどなくなってきたといわれています。
    ※ 音楽におけるジェンダー平等については、
     第26期アド塾実施企画「木管の響きにジェンダー平等を想う~アンサンブル・レ・リアンが奏でる男女共同参画の調べ~」
     で取り上げています。
     直接この動画をご覧になりたい方はコチラ、YouTube からご視聴いただけます。
    写真4 特権とマイクロアグレッション
     講座の前半では、偏見と差別、マジョリティとマイノリティについての考察をとおして、人間というのは多元的な存在であるということを意識することができました。こうした認識を踏まえて、特権とマイクロアグレッションについて考えてみましょう。
     まず、特権とは「ある社会集団に属していることで労なく得ることのできる優位性であって、差別を免れている状況」を指します。つまり特権とは差別の裏返しで、この特権を持つもの=マジョリティは、差別されている側=マイノリティが経験している不遇や苦悩、障壁になかなか気づけないのです。ここで、特権の側が、その特権に無自覚だと何が起こってくるかを考えましょう。それがマイクロアグレッションで、直接的な差別の一つの形です。明確に意図して行われるヘイトと異なり、多くの場合、加害者側が相手を貶めたことに気付いていないことにその特徴があります。時に「よかれと思って」と言われることもあり、被害を受けた者は指摘しにくく、心理的なストレスが蓄積して深刻なメンタルヘルスの不調に至ることが指摘されています。
     マイクロアグレッションは、「人種や性別は関係ない、人それぞれの問題だ」とか「あなたが同性愛者でも私は気にしないよ」などと、社会に横たわっている差別の問題を無視してしまったり、「貧困状態から抜け出せないのは本人の努力が足りないだけ」などと問題のすり替えをすることなどに現れます。
    写真5 マイクロアグレッションをしない、させない ためにはどうする?
     マイクロアグレッションが、偏見や差別に無自覚な特権の側に起こりがちなことを踏まえて、それらをしない、させないためにはどうするかを考えましょう。
     まず、①自分の問題を省みることが重要です。つまり、自分がどんな特権を持っているか自覚的になっておくこと、自分のふるまいや発言を指摘された時、丁寧に対応することに心がけましょう。
     次いで、②組織文化や制度の変更、もしくはそれができる立場の人へのはたらきかけを行いましょう。このスライドは北九州市が行った女性職員のキャリアアップを促進する取組(※)で、従来、男性主体に計画されていた人事上の研修時期の設定や昇任プロセスを、女性の出産、育児などのライフイベントに配慮して、組み直したものです。
     そして、差別やマイクロアグレッションに遭遇したときは、介入することが重要で、「5つのD」として整理されています。
    ・Direct(直接介入する):加害者に注意をする。
    ・Distract(気をそらす):ハラスメントの激しさから注意をそらし、状況を和らげる。
    ・Delegate(助けを求める):協力してくれる人を探す。また、ハラスメントを受けている人に確認して、学校の教師や職場の上司、ハラスメント窓口、その他の支援団体や警察に依頼する。
    ・Document(記録する):写真や動画の撮影、音声の録音、メモへの記入などして記録して、最終的に被害者に手渡す。
    ・Delay(後でフォローする):ハラスメントが終わった後に、ハラスメントを受けた人の様子を確認し、周囲の人に加害があったことの気付きを促す。
    ※ NHKオンデマンドで視聴(有償)できます。
     NHKスペシャル“男性目線”変えてみた 第2回 無意識の壁を打ち破れ【後編】
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